大判例

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東京地方裁判所 昭和28年(ワ)5461号 判決

原告 足立信用金庫

被告 天泰興業株式会社

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

本件について当裁判所がさきになした強制執行停止決定はこれを取消す。

前項に限り仮に執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は「被告が訴外足立工業株式会社に対する強制執行として、昭和二八年(ワ)第六四一七号売掛代金請求事件の執行力ある和解調書に基き、昭和二十八年六月二十九日東京地方裁判所同年(ル)第四〇九号電話加入権差押命令を得て、電話加入権(足立局電話加入権第四二七一番)に対してなした強制執行はこれを許さない。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求原因として、

一、被告は訴外足立工業株式会社に対し、請求の趣旨記載の債務名義に基いて、同記載の差押命令を得て右訴外会社に架設せられている足立局第四二七一番なる電話加入権の差押をなしたが、右加入権は訴外足立工業株式会社において原告に対する債務を担保するため昭和二十四年五月二十一日並びに同二十六年十一月二日工場抵当法第三条によつて他の物件と共に抵当権の目的物件となしたものである。

二、斯る物件に対しては工場抵当法第七条第二項の定める処に従いその土地又は建物と共にするのでなければ強制執行の目的物となし得ないものであるところ、前記の如く被告は単独に、これを強制執行するので、その排除を求めるため本訴請求に及んだと述べ、被告の反対主張一、に対し、工場抵当法第三条に規定する工場抵当の目的物は目的論的に解釈すべきで、必ずしも有体物に限らないから電話加入権は当然包含せられるというべきである。仮りに電話加入権が工場抵当の目的とならないとしても本件電話加入権は既に工場抵当の目録に記載されて登記がなされたと見做されているから形式的には工場抵当物件として取扱わるべきものであるから、被告がこれに対し強制執行をなさんとすれば、先ず本件電話加入権を工場抵当の目録から除外する手続をとつた後においてなすべきであり、右手続をなさずにした、被告の執行は許すべきではないと述べ、反対主張二、に対し電話加入権が工場抵当権の目的となり得るとすれば目録の記載か登記と見做される結果、更に他の対抗要件の具備を必要とする理由はない。被告主張三、に対しなお本件電話加入権が東京労働基準局長及び足立税務署長より夫々差押えを受けた事実は認めるが、これ等は何れも右電話加入権が工場抵当の目的となつている事実を知らずしてなされたに過ぎないと述べた。<立証省略>

被告訴訟代理人は主文第一、二項同旨の判決を求め答弁として原告主張の請求原因事実中、被告が本件電話加入権の差押えをした事実は認めるがその他の事実はすべて争う。反対主張として、

一、電話加入権は工場抵当権の目的物とはならないから、これに対しなされた被告の本件差押は正当である。即ち、工場抵当権の目的物件となるものは物であつて債権を含まない。電話加入権は債権であるから工場抵当権の目的とはなり得ないものであり、被告の右電話加入権に対する差押えは正当である。

二、仮りに電話加入権が工場抵当権の目的となり得るとしても電話加入権の抵当権設定に付ては対抗要件を欠缺するから、これを以て被告に対抗することは出来ない。

三、本件電話加入権については昭和二十八年二月二十七日東京労働基準監督局長より、又昭和二十七年七月三十日足立税務署長より夫々差押えをうけている。これ等の事実に徴しても被告の主張が正当であると述べた。<立証省略>

三、理  由

被告天泰興業株式会社が訴外足立工業株式会社に対する強制執行として本件電話加入権の差押えをなしたことは当事者間に争がない。

原告は本件電話加入権は原告の訴外足立工業株式会社に対する工場抵当権の目的物件に包含せられているので、被告のなした前記強制執行は違法である旨主張し被告はこれを争うので案ずるに成立に争のない甲第一号証によれば、昭和二十四年五月二十一日本件電話加入権が原告の訴外足立工業株式会社に対する工場抵当権の目的物件として目録に記載せられ登記してある事実を認めることが出来るが、工場抵当法第二条によると工場抵当権の目的となるものは「工場の土地もしくは建物及びこれに附加して一体をなした物、これに備附けたる機械、器具其の他工場の用に供する物」と規定している。右条文に所謂「物」が果して有体物のみを指称するか或は権利をも含むかは一応の疑問の存するところであるが、工場抵当法が所謂狭義の工場抵当と工場財団抵当とを区別して規定しており、しかも工場財団抵当の場合は、同法第十一条に特に有体物以外に特殊の権利を列挙している趣旨から見ても(工場財団抵当においても電話加入権が目的物件たり得るや否やは問題で、むしろ、後記理由により消極に解すべきものと考える。)工場抵当の場合は有体物に限定して解するを妥当とするのみならず、電話加入権の如きは右条文に所謂工場の用に供する物と解することができないので、この点からも電話加入権は工場抵当権の目的となり得ないものといわねばならない。

かくの如く、電話加入権は工場抵当権の目的たり得ないものであるから登記官吏がこれを工場抵当の目録に記載登記したとしても、これによつて電話加入権が工場抵当の目的たりえざるは勿論右登記は何等の法律上の効果をもたらすものではないから、被告は右電話加入権に対し強制執行をするに際し、これを工場抵当の目録から除外する手続を採る必要は毫も存しないものといわねばならない。

よつて爾余の点の判断を俟つまでもなく本訴請求は失当であるからこれを棄却することゝし、民事訴訟法第八十九条、第五百四十八条を各適用し、主文の通り判決する。

(裁判官 満田文彦)

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